「さあ莉子。きみが行きたいところに行こう」

最初はただの契約結婚だった。

王子様のようなあなたと結婚すれば、お姫様みたくハイクラスの暮らしができる。

それだけが目当てだった。

でもね、今は違うの。

結婚も大事だけど、私は今、あなたに恋をしている。

これからたくさんデートをしましょう。

行ったことのないところへも。たくさん、ふたりで経験していく。

喧嘩もいっぱいするの。

優しくて、すぐ自分の言いたいことを我慢してしまうあなただけど、私には遠慮しないで。

あなたの知らない私は、まだまだいる。私もまだ知らないあなたに会えるのを楽しみにしている。

「じゃあ……一緒に婚姻届を出しに行きましょう」

二人きりの時間を思い切り大切にしましょう。

私たちは家族だけど、恋人なの。

たくさんたくさんキスをしましょう。それと同じだけ、ハグもしてね。

今からでも遅くない。あなたと恋がしたい。

「了解。ねえ莉子、どうして僕がきみを幸せにしようとしたか知っている?」

「えっ?」

赤信号で目を細めたレヴィが、私の手を取って甲にキスをした。

「初めて会った夜。きみはお酒に潰れて、幼少期の寂しい思い出を僕に話してくれた。覚えていないだろうけど」

話の途中で青信号になる。レヴィはハンドルを持ちなおし、車を発進させる。