「私、嬉しくなっちゃって。瑛士は昔からものわかりのいい子でした。わがままを言ったことがなかったから、変な子だなって思ってたんです」

それはあなたが、レヴィを放置するから。わがままを言ったら、余計に母親が自分から離れてしまうと思ったから言えなかったんじゃあ……。

じとーっと見つめる私の視線を知らずに、笑顔で話すお母様。

「そんな彼が、どうしても莉子さんと結婚すると言い張って。ああ、この子は普通なんだ、良かった!って」

向かいに座るレヴィが苦々しい顔をしている。おそらく、私と同じことを思っているんだろう。

私、この鈍感なお母様ととうまくやっていけるかな……。いや、お母様は今もほとんど日本にいないから、大丈夫か。

ふうと息をついた私に、不意にお父様が笑いかけてきた。

「一時は疑うようなことをしてすまなかったね。あまりに急な話だったから、裏に何があるか疑わずにはいられなかったんだ」

「ああ、いえ、もう、大丈夫です」

しどろもどろに言い返す。

もともとは契約結婚だったのだけど、それは今後も秘密にしておこう。