××夫婦、溺愛のなれそめ


神藤さんの意外な言葉に、心臓がどくんと跳ねた。

嘘でしょ。まさか、秘書の中に犯人がいたなんて。

「それは……あなたですね」

神藤さんが、ある人物を視線で捕える。その視線を追って、みんなが目を見開いた。

信じられない。だって、あなたが、どうして……。

「遠藤真由さん」

名前を呼ばれて、肩を震わせた真由さん。

皆があ然とした表情で、彼女と神藤さんを交互に見つめていた。

「何のことでしょう」

震える声を隠しきれていない真由さん。怯えるような表情はまるで小動物のようで、守ってあげたくなってしまう。

けれど、神藤さんは無慈悲に続けた。

「この数日、ある人物を中心に事件の調査を独自に行ってきた結果、そういう結論に至りました」

ある人物とは……。レヴィに視線を送ると、彼はこくりとうなずいた。

「多部博之さんをご存知ですね、遠藤さん」

神藤さんに問われた真由さんは、首を縦にも横にも振らない。唇も真一文字に結んだまま。

彼女と博之に接点があったなんて。知らなかった。

何も言えないまま固まっている皆に、神藤さんが説明した。