××夫婦、溺愛のなれそめ


楽ちんなスエットパンツで大掃除をしていたので(だって、じっとしていられなかったから)、出勤用の服に急いで着替え、タクシーで会社に向かった。

果たして、秘書室にはいつもの面々が集まっていた。

ドアを開けた瞬間、ハッとしたみんなの視線が突き刺さる。

「早かったね、莉子」

そう言ってくれたのは、普段はこの部屋にいないレヴィだ。

神藤さんはじめ、他の秘書は自分の席についたまま沈黙を守っていた。

「あの、話って」

もう、他のみんなは聞いたのかな? 状況が飲み込めなくて、戸惑う。

「莉子も到着して、全員集まってからの方がいいと思ってね。さあ、座って」

レヴィに促され、空席になったままの自分のデスクの椅子に腰かける。

一息置いて、秘書室長の机の前に立った神藤さんが話はじめた。レヴィはその横でみんなを見つめている。

「先ほど、情報漏えい事件の詳細が発覚しました」

ざわりと空気が動く。秘書たちが一斉に私の方を見た。

だから、違うってば。

うんざりしたけど、黙って次の言葉を待つことにした。

「この中に、開発部の情報を流した張本人がいます」