「そうだよ、僕がいけなかったんだ。結婚なんていつでもできると思って、仕事を最優先してきた。結果、恋愛の仕方がよくわからなくなっていた」

「ぶっ」

なにそれ、乙女か。吹き出しそうになるのを必死でこらえる。幸い、王子様はうつむいているのでこちらの爆笑寸前の顔には気づいてないみたい。

「そこで、SNSで素性を隠して知り合った女性と付き合ってみた。結婚を約束した。式場を彼女が予約すると言われたから現金を渡した。そして昨日……彼女は待ち合わせ場所に現れなかった。連絡も取れなくなった」

なんと……! 王子様なのに、結婚詐欺の被害に遭ってる!

「どうして素性を隠したんです? まさか、『浅岡グループの御曹司としてではなく、本当の僕を愛してほしかった』なんて言いませんよね?」

「ぐっ……」

涙をこらえるように、眉間にぐっとしわをよせ、瞼を閉じる王子様。その口はへの字に曲がっていた。

図星だったか。初対面のときは後光がさしたように見えた王子様が、普通の人に見えてくる。

面白いな、このひと。めちゃくちゃスペックが高いくせに、恋愛だけ不器用なんて可愛いじゃない。

「まあまあ泣かないで。そういうことならさっき言ったとおり、協力しますから」