ヘイゼルの目が悲し気に揺らぐ。
「そんなわけないでしょ! 私、あなたが普通のサラリーマンになっても構わないわ」
「できれば、田舎で農業でもしたいな」
「の……農業でも、いい……。うん、いいよ」
レヴィがそうすると言うのなら。
田舎で農業はちょっと大変そうだけど、頑張るしかない。
うんうんとうなずいていると、レヴィが吹き出した。
「ウソだ。専業主婦になりたかったくせに」
「そ、そりゃそう思っていたのは本当よ。母がバリキャリで、私に構ってくれなかったから」
言ってしまってから、しまったと思った。
神藤さんのように、自分の人生のリベンジのためにレヴィを利用したと思われてしまうかも。
しかし、そんな事は杞憂にすぎなかったらしい。
「そういう事情だったのか。じゃあ、問題ないね」
にこりと、眩しい笑顔でレヴィが笑う。
「僕がどんな職業に就こうと、僕は莉子とこれから増える家族を愛し続けるよ」
「う……」
「幸せになろう、莉子」
「泣かせないでー!」
私が顔を覆うと、レヴィは声をあげて笑った。



