「疑うなら、携帯を見せてもいいわ」
スマホを差し出すけど、義兄はそれを受け取ろうとしない。
「お前が自分自身で履歴を削除したかもしれない。こちらは引き続き、独自に調査を続ける」
「調査って……兄さん、やっぱり莉子の周りを嗅ぎまわっていたんですね」
レヴィのセリフで、ある言葉が浮かんだ。
身辺調査。
そうだ、身辺調査。神藤さんが結婚を決めたときにそれをするべきだと言っていた。
「当たり前だろう。会長命令だよ」
呆れたように腕組みをして私たちを見下ろす義兄。
会長が? あのとき、あっさり私たちの結婚を承諾してくれたのに。やっぱり、それだけじゃ済まなかったんだ。
実家や過去のことを調べられるだけではなく、普段の生活まで見張られていたとは。
「このことは、当然会長も知っている。今日はこれを預かってきた」
また義兄の胸のポケットから紙切れが出てくる。
何かと思って注目すると、義兄は折りたたまれたそれをつまみ、ばさりと一気に広げた。
「あっ!」
それは、私たちの婚姻届けだった。
「どうしてそれがここに?」
レヴィも驚きを隠せない。



