「あなたがやったんでしょう。ひどいわね」
「なっ……違います。私は何も……」
百田さんの心無い言葉に、思わず反論する。と、男性秘書も百田さんの後ろから怒鳴るように言った。
「元同業者の女と結婚するなんて、どうかしていると思ったんだよ」
私を犯人と明言はしないけど、それと同じような言葉をぶつけられる。
「もうやめてください!」
醜悪な雰囲気を打破しようとしたのは、やっぱり真由さんだった。
「証拠もないのにそんなことを言うのは、名誉棄損罪に当たります。今は調査の結果を待ちましょう。私も相手の会社とCEOが接触できないか、力を尽くしてみます」
「一度断られた時点で、向こうがこっちの情報を盗んだという事実は固まったように思えるけどね」
偶然、同じような製品を開発したわけではないということだ。
こちらとの接触を断ってきたということは、やましいことがある、つまりこちらの情報を盗んだと認めたようなものだろう。
「いつもの弁護士に連絡しておくよ」
「そうね。訴訟になる可能性が高いものね」
私を無視し、男性秘書と百田さんがうなずき合った。



