言い捨てるようにして部屋を出る。ドアを開けてすぐの秘書室に戻ると、秘書たちがいっせいに私を見た。

その視線は冷たく、まるで私が情報を流した犯人だと言わんばかりだ。

気にしないようにして電話の前に座る。電話番号を調べている間に、真由さんが隣に近づいてきた。

「どこへ電話を?」

「……相手の会社に訪問されるそうです。アポをとらなければ」

「それはもう済んでます。CEOなら自分で出向くと思いましたから」

さすがの真由さんも、表情は硬いまま。

それにしても、もう相手の会社に問い合わせ電話をしていたなんて。

「でもね、真由ちゃんでも断られたの。あなたがかけても一緒よ」

百田さんが冷たく言い放つ。

そんな。秘書の中で一番能力が高いと思われる真由さんでも無理だなんて。

元社員の嫌われ者じゃ、絶対に相手にしてもらえない。

受話器を持とうとしていた手が固まって、電話の横に置くしかできなかった。

「大した演技ね。でもこれでおしまいよ。もう誰もあなたをCEOの妻と認める人はいなくなるわ」

百田さんが向かいのデスク越しに仁王立ちしてこちらを見下ろす。