異様に重かった秘書室の空気が凍り付いていくのを感じた。

新製品って、この前真由さんが会議のための資料をコピーしていた、あれのことだ。

「どこまでの情報が漏れたの?」

アラサーの百田さんが冷静な表情で言う。

「原料の配合から、制作過程まで……」

「ほとんど全部じゃないか。どこに漏らされたっていうんだ」

男性秘書が驚きを隠せず、大きな声を出した。

そんな。他社と差別化を図るのに格好の製品を開発したっていうのに、その情報が漏れてしまうなんて。

いったいどうして? 今流行りのサイバー攻撃とか?

とにかく、こちらの会社にとって大打撃なのは間違いない。

再び静まり返る秘書室。沈黙を破ったのは、ドアが開けられる音だった。

「莉子さん、こちらへ。皆さんは電話対応をしてください。会議は中止になりました」

ちらっと顔をのぞかせた神藤さんはそれだけ言い、すぐ引っ込んでしまった。

今日の会議は、例の新製品の発表をどこでどうやって行うか、ということを決める予定だったはず。それすらできなくなったということか。

秘書のみんなが私を見る。どうして私だけが呼ばれたのか、わからないといった顔だ。私自身、なぜかわからなくて戸惑う。