「そうか……」

断ると、途端に枯れた植物のようにしゅんとしてしまうレヴィ。

何よ、そんなリアクションされたら帰れないじゃない。

「じゃあ、ちょっとだけ。皆さんの邪魔をしちゃいけないから、すぐに帰るね」

仕方なくそう言うと、レヴィはパッと顔を上げた。その顔は、もう花が咲いたように輝いていた。

「ああ、そうだね。じゃあ行こう」

私の手を取り、回転ドアの中に戻るレヴィ。初めて足を踏み入れたそのビルの中は、まるでドラマに出てくるIT企業のようだった。

大きなエスカレーターが往復するロビー。一階にはコンビニやカフェが並んでいる。

受け付けを素通りするレヴィに連れられた私をじっと見る受付嬢たち。

カフェでランチをしていた社員らしき人たちもこちらを振り返る。

ああ、目立ってる。目立ってるよ、レヴィ。

しかし彼はそんなこと全く気にしていないようで、一目散にエレベーターホールへ。そこには三機のエレベーターの横に、もうひとつ扉があった。

その扉には『一般社員使用禁止』と書いてある。

レヴィはそのエレベーターのボタンを躊躇せずに押した。