私はうなずき、ゆっくりと自分の手を差し出した。王子様の手に重なると、きゅっと優しく握られた。 どうせ私の人生、これ以上悪くなりはしない。たとえこの王子様が実は連続殺人犯の変態だとしても、後悔は少ない。 守るべきものも人も、これ以上失うものはなにひとつ、私の手に残っていないのだから。 王子様に導かれるまま立ち上がり、開けられた助手席に乗り込む。頭の片隅で、もしかしたらこれは夢なのかもしれないと思っていた。