親父は愉快に笑っているが、俺にとってはた

まったもんじゃない。だって、こんな姿みん

なに見られたら、俺はどんな顔をして学校

に行けばいい?そんなの決まってる。普通の

顔してたって、後ろ指さされるんだ。絶対。


「俺にはそんな事出来ないよ」


俺は強い口調で親父の提案を断る。しかし

親父は簡単に引き下がる様な人間性ではな

かった。

「何言ってる。女の子のアイドルなんだか

ら、女の子の格好をするのは当然だろう。大

丈夫。俺が見込んだんだから間違いない。

アイドルになる事を拒否するのは、俺の見

る目を否定する事にもなるんだ」

「・・・でも、俺は・・・」

「大丈夫だって。メイクして髪型も変えれば

誰も気づかないさ」

俺は結局親父の強い押しに負け嫌々アイド

ルとして華々しくデビューする事となっ

た。

紺色で長袖のセーラー型ワンピースに黒髪

のロングウィッグをかぶった自分は、正直

なところ今まで見たどの女の子よりも可愛

くて、鏡で自分の姿を見た時には思わず見

惚れた。