そもそも彼女はまだ30代だ。それなのに既

に世間から鬼呼ばわりされているなんて。結

局そのせいで未だ独身者なのだろう。

「じゃあ舞花ちゃん、そろそろ取材始めよ

うか」

三枝さんは紙を挟んだクリップボードを取

り出すと俺の方を見る。

ついに取材が始まるのか・・・

俺は初めての取材に緊張し過ぎて変な汗を

かいてきた。

「あれ、舞花ちゃん?大丈夫?」

三枝さんは俺の異変に気づいたのか立ち上

がって俺の隣に来る。屈むと俺を心配そう

に見つめてくる。編集長も心配そうだ。

「大丈夫?舞花ちゃん」

三枝さんがそっと俺の頬に触れる。息がか

かるくらい近くに三枝さんの整った顔が近

づいてきた。

へっ!?近いよ!近いって!!

黒縁メガネを掛けているのに見惚れてしま

うほど爽やかでカッコいい。俺は男なのに

一瞬ドキッとしてしまった。

「汗かいてるね。気分悪くなっちゃったの

かな」

三枝さんはサッとジャケットの胸ポケット

からハンカチを取り出す。優しく顔にかいた

汗を拭ってくれた。