俺はこの人に対して最も当たりがキツい。

なぜならこの人が俺を「美少女アイドル・

神谷舞花(かみやまいか)」として世に売

り出しているから。

ていうか、俺がいくら血の繋がらない息子

だとしても養子なんだからやめさせようとす

るものだろ。それどころか、この人──

俺の義理の父・皆口勝(みなくちまさる)

は息子にムリヤリ女装なんてさせて自分の

番組に出演までさせてるんだ。俺がどんな

に小柄で華奢で可愛いからって思春期真っ

盛りの中2でデビューさせるなんて、ホント

公私混同も甚だしいというものだ。

「ま、俺はまだ仕事があるから。じゃ

ね~」

親父は大げさにスキップをしながらエレベ

ーターの中に消えていく。

全く・・・


俺の名前は金沢瑞希(かなざわみずき)。

今はわけあって人気女性アイドルに扮して芸

能活動している。


俺は一つ溜め息をつくと控え室に向かう。

すると別の控え室から勢い良く誰かが出て

きた。