部屋に上がると田町は気が利くのですぐに

ドリンクとコップを持って来る。俺がグチ

った事を謝ると「気にすんな」とフォロー

してくれる。ほんとにこいつは良いヤツだ。


~その日の夜~

結局、俺は散々田町にグチを聞いてもらっ

た。一方的にマシンガントークを繰り広げ

ていたにも関わらず、田町は何も言わずただ

黙って俺の話を聞いてくれた。俺の事を一切

否定する事もなく。同い年の割には中身が

大人っぽいヤツだ。

誰もいない家の中、俺は部屋の中で一人泣

いていた。どんなにグチをこぼしたって満

たされないこの気持ちは何なのだろう。

「俺が・・・一体何をしたっていうんだ

よ、親父・・・」

親父が俺を勝手に養子にした。もちろんそ

の事には感謝している。むしろ感謝してもし

きれない。きっとあのまま誰にも拾われてい

なかったら俺は今頃・・・そう思うと親父

と共に過ごした6年間はムダでなかったと言

える。

だけど・・・

俺はずっと、ずっと親父に構ってほしかっ

た。いくら親父が俺をアイドルとして成長

させてくれたとはいえ、それは俺を商売道

具としてしか見ていないから。