「じゃあ行ってくる。どうせなんだから友達

とでも遊んでこい」

親父はそう言うとそそくさと家を出てい

く。

「友達とでも遊んでこい」───

これも今まで何回も聞いた。耳にタコが出

来るくらい。

「・・・たまには一緒に出掛けたっていい

じゃんか」


俺は親父と二人で暮らしている。養子にな

ったのは9歳の頃。両親に突然捨てられ、路

頭をさまよっている時に親父が救ってくれ

た。それで今に至る。


「何で。いっつも仕事ばっかり」

「仕方ないだろう。父さんは忙しいんだ」

「知らないよ、そんなの。父さんがいけな

いんだ」

いつだったか、俺がそうやって親父を責め

立てた事がある。それでも親父は最後まで

「仕事だから」と取り合ってくれなかっ

た。たった一度だけ結婚していたそうだ

が、奥さんと離婚した理由を「俺が何でも

仕事を理由にしたから」と言っていた。そ

の通りだ。一度そんな理由でバツ1になって

いる親父なのに、未だ何も変わっていな

い。