俺は自動ドアを抜けると地下駐車場に向か

う。薄暗い中を歩いていると右側の奥から2

番目のスペースに白いワンボックスカーが停

めてあるのが見えた。

「おっ、やっと来たか」

車のすぐ側に立っているのは“舞花の送迎係”

のおじさん。おじさんは親父の友達でもあ

り俺のマネージャーでもある。

「ほんと、女だとまるで違うな。普段より

よっぽど可愛らしさがある」

「どういう意味だよ。余計な事言ってない

で、さっさと帰るぞ」

おじさん──原泰高(はらやすたか)は元

々有名女優の敏腕マネージャーだった。親

父の友達なのもその繋がりらしい。

「へいへい・・・ったく、そういうとこが

可愛くねえな」

「うっせえよ」

おじさんは後ろのドアを手前に引くとわざ

とらしく「どうぞ、お嬢様」と言って一礼

する。白々しいにもほどがあるぞ。

「やっほー!舞花ちゃん」

「えっ?っと・・・誰?」

後部座席に乗り込むと、助手席から見た事

もないヤツがこちらを振り返った。