頭の上で掴まれた手首に痛みが走る。


久しぶりに顔を合わせたが、やっぱり威圧的で恐ろしい。



「国王のお気に入りだそうだな」



え!?どういう事!?



「何を勘違いしているのか知らないけど、国王陛下のお気に入りだとか意味が分からない!」

「夜に女を自室に呼ぶ……する事は決まっている」

「する事って何!?」

「しらを切るのか? いい度胸をしているな」



ジーン王子の顔が近づいてきてギュッと目を瞑った。首に柔らかな感触がした。次の瞬間首元にチクリと痛みを感じた。


驚いて顔を上げるとまたジーン王子に見下ろされていた。



「な、何、したの……?」

「お前は俺の戦利品だ。 俺以外の者が好きに扱うことなど許さない。 俺の所有物だという事を忘れるな」

「なっ__私は誰のものでもない! 私自身のものよ!!」

「忘れるな。 お前の言動によってはいつでもバルドックが滅びるという事を」

「…………」



私に自由はないと?そう言いたいの?


何も言い返せない。悔しさのあまり唇をグッと噛み締めた。口の中に鉄の味が広がっていく。



「その印を見た時の国王の顔、見ものだな」



何を言ってるの?印?



「っ__、出て行って」



手首と体が軽くなる。それなのに体は動かなかった。


ジーン王子は何も言わず、振り返ることもなく部屋を出て行った。


何が起こったのか上手く飲み込めない。震える体を自分で抱きしめた。出てくる涙も止まらない。声を押し殺して泣くのはいつぶりだろうか。国王陛下との楽しい時間が嘘のように今は苦しくて堪らなかった。