私は凄く自分勝手な事をしてしまったんじゃないか……と、時折思う。ヘンリーに同じことをされたらきっと私は顔を真っ赤にして怒るだろう。泣き喚くだろう。そして責め立てるだろう……。


レミーの頬を指でツンツンと撫でるとじゃれついてきた。



「寂しい時はここへ来るといい」

「え……いや、あの、そういう訳には参りません! あ、いや! そう仰って頂けて凄く嬉しいです! でも、私はただの薬師です。 寂しいからと国王陛下の元へ参る資格はございません」



テンパり過ぎて自分が何を言ってるのか訳がわからない。敬語合ってる?恥ずかしい……。



「私には3人の息子がいる」

「はい」

「だがこうして話をする事はない」

「え……」



親子なのに会話がないの?


私もパパとずっと一緒にいられた訳じゃないけど、合えば尽きる事なく話をしていた。どんな疑問や質問にも、パパはちゃんと答えてくれた。



「だからベアトリーチェと話をしているとまるで娘ができた様な気分になる。 心が楽になる。 だから私のためにも足を運んでくれると嬉しいんだが?」



常に気を張った生活をしている国王陛下。その生活が少なくとも心臓に負担をかけているんじゃないかと思う。けど、この国を担う方へかけてあげられる言葉を、私は何一つ持ち合わせていない。そんな私が少しでも心の負担を減らしてあげられるのであれば、出来る事をしよう。



「私も国王陛下とのお時間、いつも楽しく過ごさせて頂いております。 これからも色々とお話をさせて頂きたいです」



国王陛下は微笑むとティーカップを持ち上げた。