「可愛い妹だけは助けてくれとでも言うつもりか? アゼル」



この人も王家の人なの?



「ははっ、まさか。 町でその子の評判を聞いたんだ。 とても優秀な薬師だそうだよ」

「何を言うかと思えば……くだらん。 優秀な薬師ならば我が国にもいる」

「その子の調合した薬を飲むと、驚くほど病の治りが早く、怪我の治りも信じられない早さなんだってさ。 何か特別な調合方法があるかもしれないだろ? 殺すのはそれを知ってからでも遅くはない筈だ」



このアゼルって人、バルドック国の人間なんだよね?それならどうしてジーン王子とこんなに親しげに話しをしてるの?一体何がどうなってるの?


掴み上げられていた手が解放された。赤くなった手首をそっとさすった。



「いいだろう。 だが、何の役にも立たない様ならその時は即刻息の根を止める」

「それでいいんじゃない?」



私の事なのにどうしてこの人たちがどんどん話を進めるの!?



「言うことを聞く代わりにあの2人は殺さないで……」

「いいだろう……とでも言うと思ったか?」

「え?」



振り返るとそこは既に血の海で息を飲んだ。震える足。立っていられなくて、その場に座り込んだ。



「なんて、酷いこと……」



涙が溢れた。ボロボロ零れ落ちていく。命を奪う権利など誰にもない筈なのに、どうしてこんなにも簡単に命は狩られてしまうんだろう。どうして……。