クリストフと体を離したエデ伯母さまは周りを見渡した。


力で心の傷を少しは癒せたとしても、みんなのエデ伯母さまを見る目は冷たいものだった。それに気付いているであろうエデ伯母さま。だけど俯向く事はなかった。



「わたくしは取り返しのつかない事をしてしまった……今更謝罪など受け入れてはもらえないでしょう。 そして、謝ることも許されはしないでしょう。 わたくしが消えればプワゾンの花はこの世界から消え、人を惑わし命を危ぶませる事もなくなる。 その事だけは安心してほしい」



毒気を抜かれたエデ伯母さま。


何故、もっと早くにこうならなかったんだろう。何故……その言葉ばかりが頭に浮かぶ。



「ベアトリーチェ、貴女にも謝りきれない事をしてしまったわね……そんな貴女の血のお陰でわたくしの中のプワゾンの血が少し抑えられた。 毒に侵されていたとはいえ、本当にごめん、なさい……」



感情が定まらない。


憎くて憎くてたまらなかった人。でもそれじゃダメだって思う事もあった。ママの事を考えると複雑な思いを抱く事もあった。


でも今は涙ながらのエデ伯母さまの言葉を受け入れたいと思った。



「エデ伯母さま、もっとちゃんとお話ししたかった。 ママの話も聞きたかった。 辛い思い出ばかりだけど、感謝してる事もあるよ」

「かん、しゃ……?」

「クリストフと出逢わせてくれてありがとう。 家族が増えて嬉しかった」



笑ったエデ伯母さまの顔が薄くなっていった。