ルネ王子はエデ伯母さま目掛けて走り出した。そして腰にさしている剣を引き抜き振り上げた。



「邪魔をするならお前も殺すッッ!!!!」

「今殺されるわけにはいかないよ、ルネ」



ルネ王子の振り下ろした剣を結界で防いだクリストフ。エデ伯母さまがどんな人だろうとクリストフにとっては大切な母親。守るのは当然だろう。


そんな事を考えながらクリストフたちの様子を見ていたら、肩をグッと抱かれた。顔を横に向けると、悲しそうに笑みをこぼすジーンの顔があった。



「引き上げて来たという事は、この戦いをあきらめたという事かしら?」



ルネ王子の剣を防いでいるクリストフの姿を横目に、エデ伯母さまはジーンに言葉を投げかけた。



「我が国には優秀な魔術師が沢山いる。 そう簡単にはやられない」

「仮にこの戦に勝ったとして、生き残れると思っているの?」

「……どういう意味だ」

「わたくしの毒は生きとし生けるものを侵し、生を奪うのよ。 そしてわたくしは人の世の王となり、精霊界をも支配してみせよう」



それって……。



「誰が生き残っても毒をもって世界を滅ぼすというの!?」

「人間界で生き残ることができるのはわたくしと、同じプワゾンの血を持つクリストフだけ。 どうせ腐った世界だもの。 とことん腐らせてしまえばいいと思わない?」

「パメラ……お前はいったい何を言っているんだ……」



国王陛下の顔が悲しみと絶望に歪んでいく。


これ程の惨劇がおころうとも、精霊界、そして天は少しも干渉してこない。無慈悲で残酷な世界。だからこそ、どうにかして救いたいのだと思ってしまう。


今更元凶である私が死んだところで何も変わらない。だったら私が__。