一瞬暗くなったかと思ったら、直ぐに目の前は明るくなった。



「ここ……」

「僕の部屋だよ」



本当だ。往診の時にいつも見ていたベッド。そのベッドにそっと寝かせてくれた。



「いつもと、逆になっちゃった……」

「うん、そうだね」



笑いながらもクリストフの顔は今にも泣いてしまいそうに見えた。


何も悪くないのに……どこまでも優しい人。



「ここには結界を張ってるから、母様は手を出せない。 僕は臆病者だから、守りの術に関しては自信があるんだ。 だから安心して」

「貴方は、臆病者ものなんかじゃないよ。 私を助けてくれた……ありがと…クリストフ」

「……今は眠った方がいい。 その間に治療するから」



私は首を横に振った。それを見てクリストフは「何故?」と言いたげな顔をした。



「いつも、眠ってる間に終わってしまう。 私は私の事を知らない。 それが歯痒くて情けなくて…嫌、なの……」



肝心な事はいつだってパパやヘンリー、ジーン……周りの人たちがやってしまう。それは私が弱いからだ。いつまでも甘えてばかりいたくない。辛い事ばかりを周りに委ねてばかりいられない。



「分かった。 今から毒の治療をするよ。 どこまで抑えられるか分からないけど、中和剤を入れていく」



準備をしてくれているクリストフの姿がどうしても霞んでしまう。何度目を瞑って開けようとも変わらない。


そしてフワフワした感覚。フカフカしたベッドに横になってるけど、それとはまた違う感覚。