頭の中が真っ白になった。



「力を使わなければいいだけの事だ」

「その子の性格上それができるかしら? それに、毒だって完璧に解毒は出来ていないでしょう? 貴方がいくら頑張ろうとも進行は止められていない。 それが現実だわ」



私は毒で死ぬか、力を使って死ぬかの二択という事?生きる道はないの?



「それ程強力な呪いをかけるという事がどういう事なのか、承知の上だと理解していいの?」

「……危険を犯してこその呪いよ。 退屈な賭けなどする価値もないわ。 臆病な貴方には分からないでしょうね、クリストフ」



クリストフの表情を見て、胸に切なさが広がっていく。


エデ伯母さまの目は我が子を見ているとは思えないほど、温かみを少しも感じられない。血の繋がった親子なのに……。


苦しくて息をするのも辛い。けど、黙ってはいられなかった。



「ッ__クリストフは臆病なんかじゃない!!」

「ベアトリーチェ……」

「私の身体を気遣ってくれる優しい人!! こんな所まで助けに来てくれる勇敢な人!! 本当のクリストフをっ!貴女が見ようとしてないだけでしょッ__!!!」



咳が出る。上手く息が吸えなくて涙がこみ上げてくる。



「弱い者同士、くだらない友情ごっこに浸っていればいいわ」

「貴女の様に孤独で寂しい人生を歩んできた人には一生分からない事だ」



エデ伯母さまの顔が苛ついた表情に変わった。


クリストフは私を横に抱きかかえると立ち上がった。



「僕はもう揺るがない」

「…………」



エデ伯母さまは冷たく見つめたまま口を開かない。虫けらでも見るかの如く蔑む視線。



「それでは失礼します」