鼻から大きく息を吸って、口から吐き出す。何度も繰り返した。



「ふふ」



声がした気がして顔を上げると、微かな光を纏った足元が目に映った。


女の人……。


更に顔を上げて驚いた。驚き過ぎて声が出ない。


漆黒の髪の毛に銀色の瞳……妖しさを含んだ美しさは暗闇の中でも健在だった。でもどうしてここに……?



「パメラ、王妃……?」



_コツ、コツ……。


ヒールの音がゆっくりと近付いてくる。目の前まで来ると、パメラ王妃は優雅に地に膝をつけた。



「可哀想に…泣いていたの?」

「あ、いえ__っ、あのここが何処だか分からなくて……出口をずっと探してたんですけど見つからなくて……」



此処はいったい何なのか?とか、どうしてパメラ王妃が此処にいるのか?とか聞きたいことは色々あるのに、出てきた言葉は違った。



「ずっと探し回っていたの? それは可哀想な事をしてしまったわ。 ごめんなさいね」



そう言って笑うパメラ王妃の顔はこの暗闇に負けないくらいの闇を感じた。背筋がゾッとした。私の中で警報が鳴っている。本能が逃げなさいと言っている。けど、まるで張り付いてしまったかのように足が動かない。



「出口はないのよ」

「……え?」

「正確に言えば“今は”と言うべきかしらね」

「それ、は…一体どうい__」

「入口も出口もわたくしの思うがままなの。 だから、わたくしが望まない限り、貴女は此処から出る事は出来ないのよ」



意味が分からない。突然現れたと思ったら、この人は一体何を言ってるの?