数日安静にしていたけど、熱が下がってからは薬師の仕事に復帰した。ジーンやアウロラからは渋い顔をされたけど、ここも私の居場所。落ち着ける場所。だから失いたくなかった。


私の素性を知っても何も変わらず接してくれるみんなには感謝している。



「ジーン王子とはどうなの? いい感じなの?」



お昼ご飯を食べながらニヤニヤした顔でロアナに聞かれた。



「いい感じだよ。 ロアナはどうなの?」

「ふふふっ! 実はついこの間婚約したの!」

「え!? そうなの!? おめでとうっ!!」



ロアナとリュカさんだったらきっと明るくて穏やかな家庭になるに違いない。子供も可愛いだろうなー。


ロアナは椅子の背もたれに寄りかかると、伸びをするように組んだ手をテーブルの上に伸ばした。



「そろそろ危ないかもしれないでしょ? だからね、二人の関係をもっと確かなものにしておこうって言ってくれて……」



色んな国がマクブレイン国に戦争を仕掛けようとしているという事が、国民の耳にも入ってしまった。理由までは明らかにされていない。


原因は私。その事を怖くて誰にも言えなかった。ロアナにも……。



「私には勿体無いくらい上品な指輪をくれたの」



ロアナは何も付いていない左手の薬指をそっと撫でた。幸せそうな目をしている。



「指輪付けないの?」

「薬草とか扱うから汚しちゃいそうで……首からかけてるよ」



ブラウスの中からネックレスを出すと、キラキラ輝くダイヤの指輪がぶら下がっていた。