アウロラは「確認する」と言って消えてしまった。



「各国の王族へ送り主不明の手紙が届いていた様だ」



ジャン王子以外にも私の力を知っている人は居る様だったけど、まさか各国に届けられていたなんて……パーティーの時から薬師の事を聞きながら、探られていたんだろう。あの時感じた不安と違和感は勘違いではなかった。



「一体誰がそんな事……」

「普通の人間には出来ない所業だ。 恐らく__」



そう言いかけて口を閉じてしまった。


ジーンが言わんとしてる事、嫌でも分かってしまう。



「待たせたな」



突然現れたアウロラの手には、コンソラトゥールのブローチが握られている。



「……エデの仕業で間違いない」



アウロラの指が伸び、ブローチが露わになった。ブローチの裏側は黒ずんでいた。


気が付かなかった。一体いつから?



「ベアトリーチェ…わらわの判断ミスだ……本当にすまぬ」

「どういうこと?」

「あまりに巧妙な細工ゆえ、気付けなかったのだ……」

「細工とはなんだ」

「条件を満たした時、術が発動するよう呪いがかけられておる。 我ら精霊の目を誤魔化せるほどの巧みな術を使えるのは、精霊王の血族くらいであろう」

「条件とはなんだ? 一体何の術がかけられた!?」



顔も知らない伯母さまにこれ程まで憎まれているなんて……。ママの血を引いているから?それともそれだけじゃないのかな?会って話ができたら、何かが変わるのかな?


伯母さまと話がしたい。それが率直な気持ちだった。



「条件と呪いはかけた者にしか分からぬ。 だが、トゥーラン国での一件が発動の引き金になったのであろう。 ベアトリーチェ、痛みなどは感じぬか?」



ソッとアウロラの手が胸に触れた。じんわりと温もりが広がっていく。



「痛くないよ。 だからそんなに辛そうな顔しないで」



痛みがない……それがある意味不気味だった。そう感じながらも言えなかった。


私がこうなってしまったことにアウロラは酷く責任を感じてる。きっとジーンも。二人のせいなんかしゃないのに……。