相手が……アウロラが動かんとした時、漆黒の閃光が走った。それは一瞬の出来事で、瞬きするよりも速かった。


トゥーラン国の騎士達がみんな倒れていく。何が起こったの?__っ!?


信じられない光景に息を飲んだ。首が__っ。



「殲滅(せんめつ)しろ」



恐ろしい程低く冷たい声が凍りついた空気の中静かに響き渡った。



「承知致しました」



よく知る3人の声が重なった。知ってる筈なのに、知らない人の様だった。


気付けば目の前にはジーンの顔があった。



「遅くなってすまない、ベアトリーチェ」

「っ__」

「アウロラ、礼を言う」

「そなたに礼を言われる事などしておらぬ。 わらわは当たり前のことをしたまでだ」



周りから悲鳴や苦しむ声……色んな声が聞こえてくる。逃げる人たち。立ち向かう騎士達。もうグチャグチャだった。



「止め、て……っ、ジーン! お願いだから__っ」



涙でビショビショになった私の頬を、ジーンは優しく拭った。



「……それは聞けないお願いだ」

「え……?」

「アウロラ、ベアトリーチェを頼んだ」



そう言うと、ジーンは私に背を向けた。



「待って__!!!!!」



引き止めようと手を伸ばした。でもその手は空気を掴んだだけだった。ジーンはすり抜けて行ってしまった。


どうして……ねぇ、どうして……。


地面がどんどん血に染まっていく。