体を離すと、驚いているリリーちゃんと目が合った。



「痛く…ない……」



リリーちゃんは驚きながらお腹と胸を何度も触っている。


傷口は綺麗に塞がり、顔色が良くなっている。



「まさか本当に治癒能力をお持ちとは! 素晴らしい!!」

「……ジャン王子?」



腰に剣を刺したジャン王子が現れた。夜会と同じ笑顔を浮かべているが、それがとても不気味に思えた。



「本当に感服いたしました。 ベアトリーチェ王女」



皮肉とも取れる言葉に嫌悪した。



「貴女の力の事を教えて下さった方がいたんですが、どう確認したものかと考えていたら“たまたま”暴動が起こったもので、手間が省けて助かりました」

「…………」



頭がついていかない。どういう事……?


ジャン王子の斜め後ろに立っているおじさんの顔を見て背筋が凍った。果物屋の……リリーちゃんを捕まえてた人……軍服を着てる……何で?



「彼に見覚えが? あー、そう言えば彼も言っていましたよ、街で貴女にお会いしたと。 貴女の性格はある程度把握してましたが……本当にお人好しで疑う事を知らない人ですね」



ニッコリ笑われた。その笑顔がどんどんぼやけていく。初めから仕組まれてた?私のせいでこんな事になったの?私がリリーちゃんたちを…みんなを巻き込んだの?



「説明して下さい!! どうして__っ! 一体誰に何を聞いたの!!!!!」

「さぁ? どなたかは存じ上げません。 ある日の朝、枕元に送り主のない手紙が置かれていました。 そこには貴女がどんな怪我でも治すことができると書かれていた。 まぁ、その手紙を受け取ったのは私だけではない様ですがね」