街について言葉を失った。至る所で煙が上がり、逃げ惑う人々。


やっぱりあの真っ赤になっていたのは炎だった。


幸い街中ではまだ大きな火事は起きていない。けど、森の方は大きな火が上がっている。急がないと__!


人が多すぎて乗り慣れてないせいか馬では上手く動けない。私は馬から降りてリリーちゃんたちのところへ走った。走りながら、長いスカートの裾を結びあげた。


逃げる人たちに混ざって、肩にトゥーラン国の紋章をつけた人たちと国民が争っている。


もしかして、暴動__?


胸が騒つく。嫌な予感が膨れ上がっていく。



「っ、リリーちゃん! ロロ君__っ!」



家の中を見渡しても誰もいない。名前を呼んでも返事もない。もう一度外に出て二人の名前を何度も呼んだ。



「あんた! こんなとこで何してんだ! 早く避難所に行きな!!」



無精髭を生やしたおじさんに怒鳴られた。



「避難所ってどこですか!?」



尋ねると「しょうがねーな!」と言って腕を掴まれ引っ張られた。途中避難し遅れた人たちも捕まえつつ、私たちは足を止めることなく走った。


突然おじさんが足を止めた。



「どーなってんだ、こりゃ……」



おじさんの背中越しに見える大きな建物。避難所……?


リリーちゃんたちを探そうと一歩前に出て目を疑った。


国の紋章を肩から下げた騎士たち、そして血だらけで地面に転がるなんの武装もしていない民たち……。



「手間かけさせやがって! 他に文句のある奴はいないのか!? 直ぐに叩き斬ってやるぞ!」



そう言い放った騎士の胸元にはたくさんの略綬が付いている。恐らく位が上の騎士だろう。そんな彼と同じ様に嫌な笑顔を浮かべる騎士たち。