楽しい日々はあっという間に過ぎていく。昼間のリリーちゃんたちとの楽しい時間があるお陰か、苦手な夜会も苦にならなくなっていた。


いつもよりもジーンと一緒に過ごせる時間が多い事も幸せだった。今もベッドの中ですぐ隣にジーンがいる。



「明日だな」

「うん! 楽しみ!」



トゥーラン国の百合祭りがとうとう明日に迫っていた。夜からが本番だけど、日中も今まで以上に沢山の人で賑わうだろうとジャン王子が言っていた。


日中はリリーちゃんとロロ君と一緒に出掛ける事になっている。もちろんダミアンさんが護衛についてくれる。未だに心の何処かに申し訳なさがあるものの、ついダミアンさんには甘えてしまう。



「ねぇ、ジーン……」

「何だ」

「マクブレインにもこの国みたいに…その、暗い部分があるの?」



貧富の差が激しいせいで、よく民と役人がぶつかり合い問題が起きるのだという。そして問題を起こした者はベッケルという役人により投獄されてしまう。投獄された者は酷い仕打ちを受け、二度と出てこられない……その話を聞いて、リリーちゃんがあれ程怯えた顔をした事に納得した。


ジーンの胸元に手を置き、顔を見上げた。



「残念ながら、少なからずな……」

「そっか……皆んなが幸せにって難しいね」

「あぁ、そうだな。 だがそうなる様努めたい」

「私もジーンの支えになれる様に頑張る! 薬師としても一人でも多くの人を救える様に頑張るよ!」



意気込んでいると、おでこに柔らかな唇が触れた。



「心強いな」

「ふふっ、そうでしょ?」



背伸びする様に顔を上げ、ジーンの唇の側にキスをした。すると顎を持ち上げられ、唇を塞がれた。優しい口付けが激しさを増していく。唇が離れた頃には頭がポーッとしていた。



「本当にお前は可愛いな」

「っ__子供扱いしてる!?」

「子供ではないのか?」

「子供じゃない!」

「では国に戻ったら楽しみにしておこう」

「え……?」

「お前の全てをもらう」

「ジーン…それって__」

「覚悟しておけ」



妖艶な笑みのまま「おやすみ」と言われ、ジーンは本当に眠ってしまった。顔から火が出てしまいそうなくらい熱くなった私は、冷めるまで眠れなかった。