「ご機嫌だな」



紙に百合の花を包んでいると、後ろからジーンに声をかけられた。



「え? そうかな?」

「鼻歌をうたっていた」

「え!? 本当!?」



恥ずかしい!完璧無意識!


ジーンに背中から抱きしめられた。



「百合の花?」

「うん、明日持って行こうと思って」

「随分仲良くなったんだな」

「…………」



たった数日一緒に過ごしただけなのに、二人とも凄く懐いてくれて、今では可愛くてしょうがない。


元は農家のお家で、不作になればなるほどご両親は必死に働いたみたいだった。リリーちゃんの話では、仕事中にお父さんが倒れ、その次にお母さんが倒れてそのまま目を覚まさなかったとの事。



「ベアトリーチェ?」

「離れるの、寂しいなって思って……泣いちゃいそう」

「お前のことだから、泣くだろうな。 って、もう泣いているのか?」



ジーンは笑いながら慰めるように抱きしめ直してくれた。ジーンの胸元に頭を寄せた。


トゥーラン城から見下ろす街並みは煌びやかで、それは日に日に増していく。もうすぐお祭り本番なのだと実感する。



「ダミアンさんにも凄く懐いてるんだよ?」

「あいつは面倒見がいいからな。 ロロという子は息子と同い年らしい。 それで扱い方も慣れているんだろう」



ん?え?



「ダミアンさんって子供いるの!? っていうか、結婚してたの!? 指輪してないよね!?」

「戦場に出るものは基本私生活が分かるような物は身につけない。 万が一敵に捕まった時に弱みになるからな」



言われてみれば、確かに殆どの人がつけてないかも。



「ある程度地位が上になればその辺の情報も知れ渡るから、そんなところまで気を使う意味など無いが、まぁ、昔からの習慣は中々抜けないだろうな」



左手の薬指の根元にジーンの指が触れた。親指と人差し指の腹でなぞられた。



「楽しみだ」

「な、何が?」

「何がだろうな」



微かにジーンの口角が上がった。


それって……私、自惚れてもいいんだよね?


自然と距離が縮まる。唇の温もりが心地良くて、とろけてしまいそうだった。