ジーンの腕に少し力が入った。



「貴女の調合した薬はまるで万能薬の様だと伺いましたよ」



へ?薬?



「ば、万能薬だなんて! 大袈裟ですよ!」



「あははっ」と笑うと、ジャン王子も声高らかに笑った。一気に緊張感がなくなった。



「是非貴女の調合した薬を飲んでみたいものです」

「何を仰いますか。 薬の出番が無いことに越したことはありませんよ」

「それもそうですね。 では今夜の晩餐会楽しんで下さい」



他の方のところへ行ったジャン王子夫妻を見送ってホッと胸をなでおろした。



「頑張ったな」

「ジーンがいてくれなかったらあんなに冷静で居られなかったよ」



ジーンの笑顔を見られただけで頑張った甲斐があった。


それからがまた大変だった。とにかく挨拶ばっかりで食事をする暇も飲み物を飲む暇もない。みんなみたいに、飲み物くらい飲みながら寛げばいいんだろうけど、上手く表情が作れない時がある為、いつでも扇子を使えるように私の左手は常に扇子を握っている。お守りを手放せない。


それにしても薬師という事が結構噂になっているのか、大抵の人に似たような話題を振られる。それもどの人も私は何でも治せるくらいの勢いで話しをしてくる。噂とは怖いものだ。