「ルネの母親はルネがまだ6歳の頃に病に倒れ、そのまま亡くなられた。 その時にパメラ王妃の黒い噂が囁かれた。 目障りだったルネの母親を毒殺したのではないか、とね」



毒殺?先日のことを思い出し血の気が引いていく。


ジーン王子の胸元に手をつき体を離した。ジーン王子の表情はいつも通りになっていた。



「ジーン王子のお母さんは……?」

「生まれつき身体の弱い人だった。 アヴァ様と出会う少し前に亡くなったよ」

「…………」

「お前にそんな顔をさせたくないんだがな……もう昔のことだ。 母を思い出し悲しむことなどない。 今では生んでくれた事に感謝できるほどになった」



ジーン王子のお母さん、会ってみたかったな。きっと素敵な人だったに違いない。だって、お母さんの事を口にするジーン王子の目はこんなにも優しいんだもん。


私はポケットから小さな箱を取り出して、ジーン王子の目の前に差し出した。



「お誕生日おめでとう。 それから、ジーン王子のお母さんには感謝の言葉を……ジーン王子を生んでくれてありがとうございます」

「ありがとう。 今までで一番の誕生日だ」



こめかみにジーン王子の唇が触れた。嬉しさと恥ずかしさでつい笑ってしまった。