馬車に揺られながら、窓から遠くを眺めた。昨晩の出来事がグルグル頭の中を巡ってる。



『ベアトリーチェ王女、改めてご挨拶させて頂きます。 ロザリウス国第二王女グレースです』



昨晩夕食後、部屋でのんびり過ごして居たら、部屋にやってきたグレース王女はそう笑顔で私に言った。


私は『ベアトリーチェです。 宜しくお願いいたします』と言葉を返した。



『少しお話大丈夫かしら?』

『はい、勿論です。 お掛けください』



歩き方も、座り方も……全ての所作が美しく品がある。流石は王女様…と感心してしまった。とても穏やかな顔をしているけど、今から物凄く文句を言われるんじゃないだろうかと覚悟しながら、私も少し離れた椅子に座った。



『ジーンから話を聞いたわ』

『…………』



やっぱりその話……。



『わたくしたちの世界は政略結婚が当たり前。 それでも親の持ってきた縁談相手と一緒にはなりたくなかった。 だから、昔から知ってたジーンに婚約話を持ちかけたの。 ジーンもウンザリするほどの縁談話に嫌気がさしてたみたいだったから』

『本人もそう言ってました』

「ふふっ、そうでしょ? それにね、わたくしはジーンとなら結婚しても良かったの。 ううん、いつのまにか友人としてではなくて、異性としての好きになってたわ』

『その事、ジーン王子は……?』

『……知らないわ。 なんだか言えなかったの。 恋してるとわかった瞬間から臆病になってしまって、関係を壊すよりも、友人以上恋人未満でいる方がいいと自分に言い聞かせたわ』