就業時間になると、薬室長と薬室長補佐が薬室に入ってきた。


普段よりも顔つきが険しく感じるのは、ロアナから話を先にきいているからかな?どことなく空気が重い。



「みんな、おはよう」



重い雰囲気の中、薬室長が話し始めた。



「その顔は既に分かっているようだね。 まもなく本格的にベルギウス国との戦争が始まる。 それに伴い、怪我人対応のため、各自配置についてもらいたい」



次々と配置先が発表されていく。こんな時でさえ浮かぶのはジーン王子の顔だった。戦場でもいいから、あの人のそばに居たい。グレース王女と私では、ジーン王子との関係は雲泥の差だけど、彼女に出来ないことが私には出来るんだと思うと少しは気持ちが楽になる。


突然手を握られてドキッとした。顔を上げると目を潤ませたロアナと目が合った。


何?



「ベアトリーチェ、初めての戦地での仕事は大変だろうが、隊の指揮はフリオン君がとってくれる。 分からないこと、困ったことがあればフリオン君に聞きなさい」

「……え?」

「薬室長!! ビーチェはここに来て一番日が浅いんですよ!? 最前線の隊なんて無理です!!」



最前線?それって一番危なくて怪我人が出るところ……だよね?