部屋への帰り、テラスに人影を見た。それはいつもは会いたくて仕方がない人……ジーン王子だった。


ちょっと遠回りになるけど、今日はテラスを避けて戻ろう。顔を合わせても泣いてしまいそう。それに見たくない気持ちもある。私の一方的な想いで酷いことを言ってしまいそうだ。


部屋に戻ると、月明かりに照らされたアウロラに誘われる様に足が向いた。


アウロラの美しさは増し、見惚れてしまう。それに対して私の心はなんて醜いんだろう。


蕾に触れ、鼻を近づけた。あまり香りのしない花だけど、今日は少し香りか濃い様な気がする。とても優しい香り。


__っ。


とうとう涙が零れ落ちてしまった。ずっと我慢していたせいか、信じられないくらい涙が溢れ出てくる。止まらない。


アウロラの葉に涙が落ち、慌てて離れた。



「ごめっ、ん__」



私の涙でアウロラまでもが汚れてしまう様な気がした。


なんで私じゃダメなのか…なんでグレース王女よりも早く出会うことができなかったのか…なんであんな出会い方をしてしまったのか……過去を振り返る言葉ばかりが浮かぶ。


初めての恋。


初めての経験でどう乗り越えればいいのか分からなかった。どうすれば前を向けるのか分からなかった。ひたすら走ろうとも、それがいい方向へ向くとは限らない。せっかく築き上げたジーン王子との関係までもが崩れてしまう。


泣く以外の術を私は知らない。


ママ、パパ……こういう時はどうしたらいいの?教えて……誰でもいいから教えてよ……お願いだから……。