その日の夜、久しぶりに国王陛下のお部屋を訪ねた。



「お身体の具合は如何ですか?」

「それ程悪くはないよ」



そう言いながら優しく笑う国王陛下の顔は、ほんの少し青白く見える。


昼間ルネ王子達とも話していたけど、ベルギウス国との一件で国王陛下もお忙しくされているんだろう。中々様子を伺いに来られなかったのも、国王陛下に時間がなかったからだ。



「今晩は早めに失礼しますね」

「そう言わずにいつもの様にゆっくりしていってくれないか。 君との時間は癒しの時間なんだ」



国王陛下はこうやって私を甘やかす。癒してもらってるのは私の方だ。



「…今日はルネ王子とロアナと3人でお昼を食べたんですよ」

「そうか、次は私も是非混ぜてもらいたいものだな」

「あはは、国王陛下が私たちと食事を摂られては周りの皆さんが驚いて倒れちゃいますよ」

「それもそうだな」



そう言って国王陛下は豪快に笑った。つられて私も声を出して笑ってしまった。



「ルネはぶすくれていなかったか?」

「ルネ王子ですか? いつも通りでしたけど……何かあったんですか?」

「今グレースが来ているんだが、彼女が来るとルネの機嫌が悪くなるものでな、少し心配していた」



そういえばグレース王女と会うのは気がすすまない感じだった。どうしてだろう。



「その…あまり仲が宜しくないんですか?」

「そういう訳ではないんだが、グレースが来ているとジーンを取られてしまうからな。 大好きな兄を取られて毎回ヤキモチを妬いては不機嫌になるところがある。 だが今回はベアトリーチェのお陰でそれはないようだな。 礼を言うよ」

「いえ! お礼を言われるような事は何もありませんから!」