私も王女だったら理由なくそばにいられたのかな……そう思った瞬間自己嫌悪に陥った。


ただのベアトリーチェでいる事を望んだのは自分自身。それなのに今更そんな事を思うなんて都合が良すぎる。バルドックの名を受け入れなかった時点で、私は国を放棄した事になる。私は自分勝手な人間だ。



「グレース王女は暫く滞在されるんですか?」



気になっていた事をロアナが聞いてくれた。



「ベルギウス国との戦争が終わるまで居るみたいだよ」



マクブレイン国を侵略しようとベルギウス国が戦争を仕掛けてきたという話は、ほんの少し前に話題になった。国中の人が知っている。



「じゃあ今回は長期滞在されるんですね」

「どうだろう? そろそろ本格的に戦が始まりそうみたいだから、そう長くはいないんじゃないかな?」



グレース王女の事は凄く気になっているけど、それ以上に戦が本格的に始まるという言葉に衝撃を受けた。


マクブレイン国に来て戦争を目の当たりにした事はない。だけど、バルドック国での出来事が鮮明に思い出される。



「戦争が本格的に始まったら街はどうなるんですか?」



私の真剣な疑問に対して、ルネ王子は静かに微笑んだ。