月明かりに照らされた横顔につい見惚れてしまう。


胸が高鳴り頬が熱い。昼間じゃなくてよかった。



「妖精を見たことある?」

「突然何だ」

「国王陛下は見たことがないって仰ってた。 貴方はいろんなところへ行く機会が多いでしょ? だから見たことがあるんじゃないかと思って」

「……一度だけある」



え?嘘!!



「どんなだった!?」

「……お前は見たことがないのか?」

「見たことないから聞いてるんじゃない!」



ジーン王子は月を見つめるように遠くを見た。



「蝶のように美しい羽を背中に付け、ガラス玉のような瞳は光を反射しキラキラと輝いていた。 今の俺の手のひらくらいの大きさで、素早く飛び回る」

「本当に小さいんだね! 私も見てみたい!」

「……その必要はないだろう。 見たからといって何かが変わるわけでもない」



この人はいったい何に興味があるんだろうか?戦?政務?婚約者……だけは違うと思いたい。


椅子に座ると何故かジーン王子も直ぐ隣に腰かけた。



「……また争いが始まるの?」

「人間がいる限り争い事はなくならない」

「そんな言い方っ__なんか、それって悲しいね」

「悲しむ暇などない。 隙を見せればのみ込まれる」



膝の上に置かれた手は拳を作り、グッと力が込められている様に見える。ジーン王子は好き好んで戦争をしているわけではないんだね。