国王陛下のお部屋からの帰り道、ふと外を見るとお月様がまん丸としていた。


満月だ。


誰もいないテラスに足を進めた。心地の良い風が頬に触れる。


満月の光に照らされた花や草木が神秘的な色を放つ。昼間の顔とは違う顔。太陽の元で見ると元気を貰えるけど、月明かりの元で見るとなんだか心が癒される。



「眠れないのか」



声をかけられ振り向くと、ラフな格好をしたジーン王子が入り口のドアにもたれかかっていた。


この人は太陽の元よりも月明かりの元が良く似合う。妖艶で美しい人。



「国王陛下のお部屋から自室に戻るところ。 月明かりが美しくて、見惚れていたの。 貴方こそ眠れないの?」

「まぁ、そんなところだ」



そう言うとジーン王子は静かに足を進めた。肩が触れそうなほどの距離に胸がドキドキした。この胸のドキドキが何なのか……私は自覚してしまった。どれ程の想いを持とうと、この人との未来はないと言うのに……。



「花を受け取った」

「ルネ王子がジーン王子にも届けて欲しいと仰ったので……花は嫌いじゃなかった?」

「あぁ、好きでもないがな」



この人はいつだって自分に正直だ。最初こそその態度に腹が立っていたが、今となってはその素直さを清々しくも感じる。