見ると、生暖かい風で桜の木がゆらゆらと揺れている。 その木は四、五歩、歩いたところで立っていた。 ああ、違った。 揺れていたのはそばにあった池だ。 透き通るような青の水面が太陽の光に反射して、きらきらと輝いている。 澪は腰を下ろし、それを覗いた。 だが水面に映っていたのは澪ではなく、 「ねえ笠原さん。彼の時間を返して」 杏奈先生の泣き顔だった。