待ち合わせは駅の南口、西側。
付き合った日と同じ場所。


約束の時間よりも少し早めについてしまった。沢山の人が行き交うのをぼーっと眺めていた。隆也はどこからくるんだろう。


別れてから1ヶ月。あの日から随分と私は変わった。自分のことも、隆也への気持ちも。左手には紙袋。隆也に返す彼の私物。これを渡してしまえばもう他人。



「…ごめん、またせて」


どこからきたかわからないけれど、隆也は私の後ろ側からやってきた。


「…久しぶり」

「おう」


何も変わらない。私の好きだった隆也。やっぱりかっこいいなあ なんて思ってしまう自分が本当にバカだと思う。この人は私を振った男なのに。

これ、と言って隆也は私に荷物を渡した。私も同じように紙袋を渡す。


「元気そうだね」


そう言うと、隆也はまあな、と軽く笑った。ただの作り笑い。


ねえ、隆也、私あなたにいいたいこと沢山あるんだよ。でも、やっぱり言えない。少しでもいい彼女だったと思われたい。少しでも可能性を、残したい。


「澪は、なんか変わったな、雰囲気」

「そう?あ、少し痩せたけど」


別れてから食欲なくなったんだよ。


「……あんま、長く居てもあれだし、もういこうかな」


隆也は足元を見ながら居心地悪そうにそういった。そうだよね。一刻も早く帰りたいよね。一緒にいたいのは、私だけ。


「そうだね」


隆也はうなづいた。


「元気でな、澪」



ひとつ、隆也にこれだけは



「タカ、幸せになってね







新しい彼女さんと」




言っておきたかった。