「受付の女性って女子力高そうだし、綺麗な人だったじゃないですか」

「好きでもない人とは付き合えない。倉橋さんもそうだろ?」

「それは確かに」

それは私にも心当たりはある。

周りから鉄壁だと言われている私は、誘われても告白されてもすぐに断ってきた。

相手のことを全くといっていいほど知らないうえに、私に恋心がない状態で、中途半端に曖昧な返事をしても相手に失礼だし、申し訳ない。

もう少し軽く考えたらと言われたこともあったし、友だちから始めたら、なにか変わるかもしれないって言われたこともあった。

けれども、私はもしかしたらこの先一生、誰かを好きになることなんてないのかもしれない。

そんなことを考えながら、ふと窓の外の景色を見ると、いつの間にか夜景が広がっていた。

こんな夜景を見るのは何年ぶりだろう…。

確か、最後に付き合った人と別れた時も、夜景が広がっていた気がする。

途端に私の頭の中に苦い思い出が蘇ってくる。

私は必死でそれを振り払おうと、頭を左右に振った。