屋上には、すでにたくさんの人たちが集まっていた。

私たちは、その隙間に花火を見るのに丁度いい場所が空いていたから、すかさずそこに入る。

お互い気まずくて、しばらく無言の時間が続く。

「僕さ...」

最初に言葉を発したのは、蒼だった。

「桜との関係が変わることは、絶対にないと思ってた。

ずっと幼なじみで、ずっと仲良くて」

ごくりと喉を動かして、話を続ける蒼に、

聞き入っていた。

「高校に入って、桜が山川くんのことをすきになって。

気付かされたんだ。桜のこと好きだったんだって。

でも、桜の視界に僕は全然入ってなくて、悔しかった。

嫉妬して、おかしくなった。

でもファッションショーを開くことになってから、

仲のいい2人を見てたら、【僕に入る隙間ない】

って分かった。

だから、僕は応援するよ。

だから、僕は笑うよ。

だから、僕は泣かないよ。

だから...だから...」

止まらない蒼の目から流れ出す涙は、とても儚くて悲しくて。

なんども昔から見てきたはずなのに、いつもと違う涙。

「蒼っ...」

「大丈夫。行ってきなよ、山川くんの所!

さっきから美羽、僕たちのこと見てるよ?」

そう言われて振り返ると、苦い表情でこちらを見る美羽がいた。

躊躇っていると、どんっと背中を押された。

「え?...」

「ほーらっ!」

慌てたようにこちらに近づいてきた美羽を気にしつつ、

蒼を見る。

〈いってらっしゃい!〉

口パクでそういい、手をふって。

ほんと、ずるいな。

私が幸せになっていいなら、

蒼も近くに思いを寄せてくれてる人がいることに、

早く気づきなよ!

〈ありがと〉

そういい残して、美羽のもとに向かった。