薔薇に願いを込めて

「健人...?」

目の前には額に汗を浮かべた健人がいた。

「大丈夫か?これ、飲めよ」

「ありがとう」

渡されたのは1本のミネラルウォーター。

こんな事、前もあった気がする。

って丁度思っていたときに、まったく同じことを口にした。

「前も、こんな場面あったな。

確か桜が暑さのせいで倒れたんだけど、なかなか起きなくて、

起きたあとに...」

そこで健人は、言葉を詰まらせた。

そうだよね。

だって私、遠回しにそのあと告白したんだから。

抱きついたけど離されて、見つからないように頑張って泣きながら帰ったんだから。

苦い記憶を紛らわせるために、持っていたミネラルウォーターを勢いよく飲んだ。

でもそのせいで、変なところに入っちゃって咳が止まらなくなっちゃったけど、

健人が背中をさすってくれて、恥ずかしさに咳が止まった。

「本当にこのあと、大丈夫か?」

「うん!」

だって今日にくるまで、こんなに頑張ってきたんだから。

ここで他の人と変わるなんて絶対に、自分が許したくないんだ。

まだくらくらする重たい頭を起き上がらせて、

無理やり笑って見せた。