薔薇に願いを込めて

「うん、もちろん!

あ、あと私、蒼くんが好きっていったわよね。

今は、好きじゃないのよ。

ごめんなさい、嘘。...諦めたわ。

美羽も蒼くんの事、好きなんでしょう?

今回は美羽に何回も助けられて、感謝しか出てこないわ。

だから、そんな美羽のためにあきらめたわ。

まぁ、どうせ蒼くんよりもいい男の人なんて他にも...」

頬に一筋の涙がこぼれた。

ポツリポツリと地面に落ち続ける。

「どうして...」

小さくそう呟いたのを聞き逃さなかった。

「それは、自分の心に素直になってないからだよ。

『諦める』事が出来ないくらい、大好きなんだよ。

私は美羽の親友だけど、華恋ちゃんも大事な友達。

無理はしなくてもいいと思うよ。

美羽にも蒼が好きだって言ってみたら、分かってくれるはず。

頑張れ!華恋ちゃん!」

「そうよね。私がくよくよしてちゃ、桜を送り出す顔がないわね。

美羽に言ってみることにする。

本当にあなたたちには、背中押されてばっかりね。

頑張るわ。ありがとう。

その代わり、私に頑張れっていったなら桜も1歩踏み出しなさい。

桜は山川くんが好きなんでしょう?

私の見る限りだけど、山川くんは桜にかなり気があると思うわよ。

...はい!

話が長くなったけど、メイク出来たからいってきなさい!」

話に夢中になっていた時には出来ていて、

鏡に写った私は、別人のようだった。

いつもは奥二重だけど、鏡の中の自分は、くっきり二重、

アイラインは長く引かれていて、アイシャドウやラメはとても綺麗につけられていた。

他にも私には未知の世界のような施しがされていた。

まるでお人形さんになった気持ちになる。

このメイクの力があれば、大丈夫、出来る。

「ありがとう!頑張ってくるよ」

華恋に手をパニエの入ったドレスをふわふわさせながら、

駆け出した。