「はぁはぁ」

僕は、坂道の前でブレーキをかけて止まった。

僕の呼吸はすでに荒く、ここで一旦休憩しないと、この坂道はのぼれないのだ。

「よ、願」

疲れた顔で少し急な坂道を見ていると、背後から僕の名前が呼ばれた。

「‥‥‥」

僕は、後ろを振り向いた。

僕と一緒の高校の制服を着た、自転車を乗った若い男性の姿が目に見えた。日焼けをした褐色の肌、さっぱり短めに切った黒髪のショートヘア、やや垂れた優しそうな目、身長は僕とそんなに変わらないが、体型は人並み以上にふくよかだった。

「なんだ、石神尊人か」

僕は、彼の名前を口にした。

彼とも幼稚園からの付き合いで、高校も一緒の学校を通っている。昔からの長い付き合いもあってか、彼とは冗談を言い合える数少ない僕の友人だ。

「尊人。お前、ずっと夏休み食って寝てただろ。少しは、運動しろよ!」

僕は、ぽっちゃりと太った尊人のやわらかいお腹をさわりながら言った。