彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「どうして、尊人君を殴ったりなんかしたの?」

母親が振り返って、重い口を開いて僕に訊いた。

「‥‥‥‥」

僕は口を閉じたまま、なにも言わない。

二人の間に重い空気が漂い、息苦しい。

「尊人君とは、友だちなんでしょ。どうして、殴ったの?」

母親は僕に説教しているはずなのに怒り声ではなく、どこか悲しそうな声で訊ねてきた。

「先生からの話だと、先に手を出したのは願からだと言っていたけど、なんでなにもしてない尊人君をいきなり殴ったの?」

母親は、眉を八の字にして訊いた。

「ごめん。母親に心配かけたことは、謝るよ」

僕は、か細い声でそう言った。

母親には殴った理由は、伝えたくなかった。殴った理由が、尊人がこっそり僕の好きなつぼみとデートしていたからなんて、思春期の年頃の僕には恥ずかして言いたくなかった。

「謝るのは私じゃなく、友だちの‥‥‥‥」

「それよりお母さんこそ、僕の心配なんかしてていいの?」

「え!」

母親の言葉を遮って、僕は低い声で質問した。